2010年 12月号

 12月に入って、一段と“寒さ”を感じる季節となりました。
お子さんをお持ちの皆様が、この時期心配なインフルエンザですが、9日時点で、当クリニックでは、診断例はありません。周囲の市町村でも少し報告がありますが、毎日報告されるような状況ではありません。このため、おそらく、年内に流行期に入る可能性は少ないと思われます。冬休みに入り、恒例の年末年始の移動が始まってから、その後に、流行するものと思われます。年内にインフルエンザ予防接種完了していれば、十分と思われます。

今季どうする? “抗インフルエンザ薬”その2
 小児にとって、インフルエンザは、発症1〜3日が最も症状の強い時期です。このため、発症して高熱・倦怠感でしんどそうであれば、抗インフルエンザ薬を使用する、元気であれば使用しないという従来の考え方でよいと思います。また、B型インフルエンザにはあまり有効でないと言われています。B型には、投薬なしでもよいと思います。というのも、今までの報告では、抗インフルエンザ薬は異常行動や脳炎の予防効果はなく、発熱期間を1〜2日少なくする効果しかありません。昨年の豚(新型)インフルエンザも、ほぼ同等と思われます。ただ、豚インフルエンザでは、従来のインフルエンザより、肺の中へ侵入しやすい傾向があるようです。この場合でも、発症1〜3日に、呼吸困難を伴う呼吸器症状が現れるようですので、この時期のお子さんの状態観察が重要と思います。

インフルエンザで最も重要なことは、インフルエンザに罹患した場合

  1. インフルエンザ脳症など症状が重篤になるのは、通常発症13であり、この間、大きなお子さんでもお子さんの状態をしっかり観察する。抗インフルエンザ薬の使用の有無にかかわらずしっかり観察する。
  2. 抗インフルエンザ薬を使用する場合、内服であっても吸入であっても、指定された日数を確実に使用する
  3. 人に感染させたいために、発症約7日間、または、解熱後約3日間(抗インフルエンザ薬は使用終了している)は、人に2m以内に接触しない。

新しい抗インフルエンザ薬
 一つは、静脈注射薬が発売されました。小児に使用する場合、点滴が必要です。この場合、約1時間程度の時間がかかり、診療所での対応は困難と考えます。静脈薬が必要な重篤なお子さんは、入院加療が必要と考えます。
もう一つは、吸入薬です。リレンザは5日間(1日2回吸入)使用ですが、この吸入は、原則1日のみ(2〜4吸入)の使用です。このため、確実に薬を吸い込む必要があります。大きなお子さんでないと無理かもしれません。投薬する場合、吸入方法を確実にマスターする必要があります。


大阪府下感染情報(11/29〜12/5
 
感染症の報告は前の週に比べて、25.8%増加しています。感染性胃腸炎の増加が目立ちます。多い順から、感染性胃腸炎・水痘・溶連菌・RS・おたふくの順です。
 RS感染が、11月中旬から増加しています。RSは年長時には“咳・鼻汁”の強い通常の“感冒”ですが、乳児では“細気管支炎”という、呼吸困難を伴う気管支炎になり入院が必要となる、小さい乳児にとっては、インフルエンザより入院する割合の高い疾患です。通常、インフルエンザの流行前に流行します。これから年末年始にかけて、お子さんの咳や喘鳴、特に6か月以下のお子さんでは、発熱なく発症しますので、咳や喘鳴とともに哺乳低下があれば、小児科へ受診してください。


当クリニックの感染情報(12月10日現在
 いろんな胃腸炎が流行中です。その中で、嘔吐主体の胃腸炎が最も多いと思われます。 嘔吐主体の胃腸炎は、お子さんでは嘔吐が強いのみで、嘔吐が無くなれば早期に回復し、重篤になることは通常ありません。どのようなウイスル性の胃腸炎でも、嘔吐と熱と下痢が主症状です。3つの症状がそろう時もあればそろわない時もあります。いずれにしても、嘔吐が止まって熱が下がって下痢が改善します。吐物と便の中にウイルスが存在し、便の中には2週間程度存在する可能性があります。さらに、胃腸炎のウイルスは、排泄されても長く“外”の環境で生き残っています。特に吐物は、どこで排泄されるかわかりません。吐物で汚染されたものは、密閉してできるだけ早期に廃棄してください。

なかじまクリニック 小児科・循環器科
院長 談