2010年 6月号
  梅雨入りする前の、良い天気が続いています。これから雨が続くのは気分がめいりますが、これも日本の季節の風情と考えて、体調を整えて、夏本番へ向かいましょう。

 最近、話題に出た"百日咳"について
 以前のクリニックニュースにも記載したと思いますが、最近、お子さんの親御さんが、"百日咳"と診断されたと数名聞いたので、疾患について、小児科医の立場から説明します。
  百日咳とは、これは百日咳菌で起こる感染症です。三種混合予防接種の普及で減少していますが、この予防接種を打っていれば絶対にかからないわけではありません。  
  三種混合予防接種の主な目的は、生後6ヶ月未満の乳児では、百日咳に罹患すると重症化したり、脳症をおこしたりするので、それを予防することです。このため、生後3ヶ月を過ぎれば、早めに三種混合を接種することをお勧めします。

 百日咳の症状
  潜伏期 平均7日以内。
  カタル期
1から2週間続くかぜ症状で、熱はなく、だんだんと夜間の咳が強くなる。
   痙咳期
  (ケイガイ)
長く続く連続的な咳き込みとそれに続く笛声を伴う吸気(息を吸う)と 言う発作を繰り返す。
咳がひどいために、顔面が紅潮する。乳児ではこのような咳き込みはなく、 無呼吸やチアノーゼ発作として現れることもある。これが4から6週間続く。
  回復期
徐々に咳き込み発作が減少し、2から3週間のうちに咳が消失する。
  治 療
カタル期に抗生剤を内服しないと罹患した人の症状の改善は得られません。このため、治療は遅れることがほとんどである。痙咳期にも抗生剤が1〜2週間投与されますが、これは排菌を防ぐ(他の人にうつさない)目的である。
 
  以上が、百日咳の病状です。
年長児や成人では、上述したような典型的な症状を示さず、"長く続く咳"の症状のみのこともあります。咳が続くと、体力の落ちた人にはつらい症状となります。  
  日本では、三種混合ワクチンは、乳児期3回とその1年後に接種されています。これによって、小児の百日咳の流行は、なくなるかごく小規模になり、また流行の間隔が長くなりました。その結果、百日咳菌に遭遇する機会が減少し、予防接種の効果が失われるようになってきています。三種混合接種後10年以上たつと、約半数のお子さんが百日咳の発症を予防する免疫力を持たなくなってしまうというデータがあり、日本でも、12歳で接種する二種混合を百日咳も含めた三種混合接種に変更することが期待されています。          

 大阪府下感染情報(5/31〜6/6)
 
多い順から、感染性胃腸炎・手足口病・水痘・溶連菌・おたふくの順です。
  麻疹の報告が2例ありました。春〜初夏に流行するのが麻疹です。1歳過ぎれば早急にMR接種してください。
 
  新年長児・新中学1年生・新高校3年生のお子さんへ、

 毎年繰り返しますが、MR(麻疹・風疹)ワクチンは2回接種がとなりました。可能な限り夏休みまでに接種しましょう。

 当クリニックの感染情報(6月10日現在)
 胃腸炎は、園や学校の地域流行でなく、散発的に発症しています。胃腸炎の症状は、嘔吐・発熱・下痢です。特に嘔吐や発熱は病気の初期症状です。まずは"嘔吐"が無くなり、水分が補給できるかが重要です。嘔吐後は少し時間をあけてから、少量ずつ小分けして頻回に水分補給をしてください。
  水痘・溶連菌・おたふくが散見されます。溶連菌は一時減少しましたが、まだ続いています。

 日本脳炎予防接種
 新しいワクチンが開発され、現在接種可能です。7歳半までが公費負担です。

なかじまクリニック 小児科・循環器科
院長 談