2008年 5月号
 
 新学期も始まり、ゴールデンウィークも終わり、これから夏休みまで幼稚園・学校が続いて、疲れが出やすい時期となりました。
体調を崩さず頑張りましょう。

@ 大阪府下感染情報(4/28〜5/4)
 多い順から、感染性胃腸炎・水痘・溶連菌・アデノウイルス・手足口病の順です。 麻疹の報告が増加傾向にあり、大阪市の北部や豊中の一部の中学校で、麻疹の集団発生が4月の末から認められます。
 今年から始まったMR(麻疹・風疹ワクチン)V期やW期の中学1年生および高校3年生のみなさん、夏休みまでに必ずMRワクチン接種を受けましょう。


A 当クリニック感染情報(5月10日現在)
 当クリニックでは、胃腸炎・溶連菌・水痘・おたふくかぜの順で疾患が散見されます。
B 溶連菌感染と抗生剤
 溶連菌は今のところ抗生剤に対する強い耐性(抗生剤が無効)は獲得していないようです。以前、マクロライド系の抗生剤(エリスロマイシン、クラリスなど)に耐性が報告されたことがありましたが、当クリニックでの2、3例の咽頭培養検査では、マクロライド抗生剤耐性の溶連菌はありません(同じ溶連菌といっても個人や地域によって種類が異なり、抗生剤の耐性が異なる)。
以上から、現在流行している溶連菌の大半は通常使用されるどの抗生剤でも有効であることになります。しかし、溶連菌感染の治療の目的は、こどもの咽頭から溶連菌をなくす(除菌する)ことが目的です。
このためにしっかり抗生剤を一定期間内服することが必要です。
一方、抗生剤を長く内服すると、体に存在するいろんな種類の細菌に抗生剤耐性ができると言われています。本来、溶連菌にのみ有効な抗生剤があれば最も適切治療と言えますが、現在そのような抗生剤はありません。
当クリニックではペニシリンアレルギーがない限りのペニシリン系のアモキシリン(サワシリン、パセトシン、ワイドシリンなどの商品名)を原則10日間内服で治療しています。
日本でよく使用されるセフェム系(ケフラール、セフゾン、メイアクト、フロモックスなど)も有効ですが、セフェム系抗生剤の使用は、ペニシリン系抗生剤を使用に比べて、細菌の抗生剤の耐性化が進む可能性が高いと言われているため、ペニシリン系を使用しています。

 溶連菌が流行していると、時に御両親が"溶連菌"と診断され、抗生剤を内服していることを耳にします。成人が溶連菌感染になって、こどもと同じようにリュウマチ熱(心臓の合併症を伴う)や急性腎炎になるか?や成人も除菌する必要があるのかは不明ですが、少なくとも家族内から溶連菌をなくす目的なら(大人が菌を持っているとも大人は発症せず、こどもが菌をもらって発症する?)、最低でも5日間の内服が必要です。最後まで確実に内服しましょう。
  溶連菌はどこにでも存在しますので、除菌に対してあまり神経質になる必要はありませんが、熱が出ればすぐに"抗生剤"を処方される場合には、不十分な治療になりかねないので注意が必要です。ただ、溶連菌感染後にまれに発症すると急性腎炎は"抗生剤の確実な内服"で予防することができた報告はありません。

なかじまクリニック 小児科・循環器科
院長 談